春、雪の日
東京、2020年春。わたしたちの世界に疫病が蔓延していた。 世界中の多くの人が家にとどまることを余儀なくされ、多くの表現者たちも同様、ネットを使った表現活動に制限されていた。 友人のアーティスト/ダンサーである桑原史香さんの新作ワンピースの展示『指先のダンスのために』(サロン夏休み at Amleteron)も延期を経て、無期限延期となった。3冊の本を題材にしたワンピースを3着作るという企画だった。 3月末に予定されていた展示のための写真と映像の撮影も延期となった。 ワンピースのモデルを予定していていたパフォーマー/ミュージシャンの高橋牧さん、僕、ふみかさん、3人、皆そっと家にいて、けれど「それぞれの家で何か作れればいいかも」「牧さんは朗読などしたら?」「それに映像とか写真とか家で撮ったり…?」「ワンピースの素材なども何か使かったり」などと、やりとりをしていた。 3月28日夜、牧さんが朗読のテキストを送ってくれて、それに映像を付けるという話をした。テキストはポールギャリコの「雪のひとひら」。雪のはじまりを語る美しい朗読を聞いて眠り、目が覚めると、